キャリアコンサルタント・指導者の自主学習

キャリアコンサルタントや指導者が「無料」で学習する素材を入れています。

文章が多く読み込みが大変ですが、ご参考にどうぞ。

今後指導者向けに課題例・指導方法例等充実させたいと思っています。のんびりお待ちください。

 

キャリアコンサルタント熟練レベル(技能検定2級)に求める能力と、力量をあげる為に

本来理想とすべきキャリアコンサルタントにはどんな力が必要となり、どんな勉強をすればいいのか?

検定に何が出る、ではなく、本質的に、どういう能力を高めて欲しいと思っているのかをご説明します。

理論(知識)と実技(実践)があるのですが、まずは実技からご説明します。

 

<キャリアコンサルタントに必要な力>

この図に「自己評価」「基本的態度」「職業情報」「メンタルの知識」等が加わります。

図の説明をします。

この絵には、目的と手段が混在しています。

目的は「(クライアントに対し)価値を提供する力」です。

面談(支援)を受ける前と受けた後とで、「思考・行動・感情等」が前向きに変化する=クライアントへの価値と考えています。

正直言えば、これが高いレベルで実現できるのならば、他はどうでもよいという考え方すらあります。

しかし、この目的を安定的に実現するには、「関係構築(関係を作り・維持する力)」は不可欠ですし、問題を解決する為には、クライアントにとっての「問題を深いレベルで理解」することが不可欠ですし、場当たり的にやっても解決する可能性は低いですから問題理解した上で、その「問題を解決するための戦略(シナリオ)を作れる」ことが必要ですし、しかしその戦略も、相手がモノではなく「人」なので、クライアントの心理ステップにあった戦略を立てることができないと役に立たない訳です。

戦略も1回作ったらそれっきり、ではなく、5分なら5分時点の戦略、10分なら10分時点の戦略、20分なら20分時点の戦略、と常に修正しながら進めていくものです。

対処、は、いくら適切な意見指示をしたところで、クライアントがそれに従わなければ全く価値を産みません。

対処の部分は、技法的な言い方をすると「課題解決のストロークに関係構築のストロークを組み合わせて進める」ことが重要。

やや理念的な言い方をすると、クライアントが今どう感じているか、クライアントの心理ステップに応じて進めることが重要、となります。

標準レベルのキャリアコンサルタント(国家資格キャリアコンサルタント)では、関係構築のスキルを中心的に学習しています。

しかし、熟練レベルのキャリアコンサルタント(技能検定2級)は、

「問題を抱えた人間」に対応する為に

①関係構築(維持)の能力

②課題解決の能力

の両面が求められるわけです。

実は②はビジネス経験の中で相当実践をしていますので、ビジネスキャリアが深い方は、熟練は「課題解決と関係構築の統合」をどうやるか、という統合の練習が中心になります。

一方で、標準レベルで「キャリアコンサルタントに向いてるねー」と周りから言われた、相手の気持ちに敏感なタイプの方は、気持ちだけではまだ十分でなく、相手の課題はどうやったら解決の方向に進むのか、と、「課題解決」「戦略性」を勉強することになります。

どうもこれは相反する資質のようで、両方が得意な方は非常に少ないようです。

これらの力をどうやって伸ばしていくか?

A:理想的にはスーパービジョンによって高めていく。

しかし、残念ながら、我流でなく、相手を高めるスーパービジョンを実施できる方は非常に少なく、スーパービジョンを実施できる人を少しでも増やしていこうとしているのが今の実態です。

今回コロナへの対策としてオンラインで学習できる社会的認識が進み。キャリア研修センターでも今後一部オンラインでのスーパービジョンを実施していきたいと思っています。

B:視点を学習し、チェックすることで自ら高めていく。

現実的には今力量を高めるのはこの方法かな、と思っています。

上記の図はある意味チェックするポイントの整理ですし、国家資格キャリアコンサルタント、技能検定2級キャリアコンサルタントも上記視点の実現度を測るような内容になっています。

この部分もオンラインで今後実施していこうと考えています。

 

まずは自主学習する方法を以下に紹介します。

体験の中で説明しないと誤解されやすいので、できれば双方向で説明したいのですが、学習の参考にしてください。

ダウンロード
キャリコンセルフチェックシート
check1.pdf
PDFファイル 93.0 KB
ダウンロード
自主学習用プログラム
self1.pdf
PDFファイル 182.1 KB

指導者(指導レベルキャリアコンサルタント・技能検定1級?)に求める能力と、力量を上げるために

(ここに書くことは「指導者レベルに対し本来的にどういう力を求めているか、その為にどういう学習をすればいいか」ですので、「技能検定で何が出て対策でこれだけやっていたらいい」という類ではありません。)

 

(以下11.08.03)に書いた内容です。

①国が求めている「指導レベルキャリアコンサルタント」の概念を理解する

これはまずこのレポートを読んでください。

http://www.career-kentei.org/download/20houkokusyo.pdf

指導レベルキャリアコンサルタント(1級)は「1つ以上の得意とする領域を持ち、かつそれ以外の領域においても一定以上の支援が可能であり、スーパービジョン機能及び領域間のコーデイネート機能を併せ持つレベル」とあります。

ではどんな能力が必要なのか?

イ)キャリア・コンサルティング能力

ロ)指導能力

ハ)コーデイネート能力

の3点です。

検定に関心がある方は「要素別の能力把握方法」も書いていますから読むことをお勧めします。

「知識」「スキル」「思考・行動特性」をそれぞれ、学科、論述、ロールプレイ、口頭試問で図るイメージが記述されています。

イメージ図もレポート28Pに書いてあり、熟練レベル(2級)よりも、対クライアント能力を高め、その上に対組織のコーディネート能力を加え、更に上に対キャリアコンサルタントへの指導能力が加わる、と作図されています。

更に言えば「実践の場面で求められない、過度の細かい知識を問う試験」ではなく、「利用者(クライアントや指導を希望するキャリアコンサルタント)に望まれる人が合格するような設計とすることが必要。そのために支援の現場に直結する実践的な問題、知識の活用方法等の応用問題を出題する工夫が必要」。さらには「必要な知識・スキルだけでなく、思考・行動特性についても可能な限り把握することが必要」とコメントされています。

次に検定を行うキャリア協議会の試験科目・範囲・細目を見ます。

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/viewer.html?pdfurl=https%3A%2F%2Fwww.career-kentei.org%2Fwordpress%2Fwp-content%2Fuploads%2Fgrade1_kamoku_hani2020.pdf&clen=288139&chunk=true

基本は「熟練レベル」で求めていたものが「一般的な知識」が「詳細な知識」に変わっただけですが、国のレポートにある「支援の現場に直結する実践的な問題、知識の活用方法等の応用問題」という「現場で全員は知らなくてもいいが誰か一人は知っていてほしい」というような視点でメリハリを考える必要があると思います(例えば、メンタルや発達障害の見立てやリファー先は誰かは知っていてほしい等考えてみると領域ごとに沢山あると思います)。そして、「熟練」から追加された領域(「教育指導」や「事例検討」等)を学習するのは当然ですが、「コーディネート能力」にあたる「環境への働きかけ」や「ネットワークの認識と実践」ともう一度深めることをお勧めします。

 

②必要な能力の整理(田中の個人的な考えです)

まず最も大事なことは「指導者」なので「指導能力」だと思っています。指導とキャリアコンサルティングの最も違う点は「ゴール」です。キャリアコンサルティングのゴールはクライアントの人生ですからクライアントの自由です。ところが指導は「キャリアコンサルティングの専門職」に向けての指導ですから、受講生の自由ではありません。専門職として理想の姿=目標に近づかなければ指導として成立しません。

ゴールが分かったうえで、受講生がやっていることがどうか適切に評価できる。今の力量=今の問題点を具体的に評価する力が必要です。

問題と目標を繋ぐのが「戦略」。指導の戦略あるいはプランを持って指導しているかが大切です。

指導する戦略のもとになる指導の理論ですが、教育学や教育理論を見てもそれほど真新しいものはありません(今も個人的にいい資料がないか調べているところ)。既に皆さんが学習している(あるいは学習することになっている)「理論」(特に学習理論)で大きくは対応できます(指導を受ける立場から考えれば学習理論と指導の理論は表裏一体です)。ただし、カウンセリングの指導と言う意味では、「スーパービジョン」の大枠について一度学習する事をお薦めします。

「指導能力」で私が一番感じるのが、凄いプレイヤーが必ずしもよい指導者ではないということ。プレイヤーは自分の型を作ってそれを習熟すればいい結果を安定的に出せますが、その型を一方的に押し付けても相手は成長しない、ということです。相手の型に合わせた指導ができるかどうかです。

これ、言葉を変えると、プレイヤーは自分の得意な理論を見つけて深めればいいのですが、指導者は受講生が(潜在的に)やろうとしている理論に沿って深めてあげ、その後に自分が得意な理論を幅を広げる為に教えた方が受講生は成長します。受講生が道の途中まで来ているのに、自分が慣れないからと自分の理論で説明するのは、「あなたの方法は全くダメ」というメッセージに感じます。この部分が指導する時に注意しないとよく失敗する要因です。

ところが、キャリアコンサルタントの訓練の中で「戦略」=「解決方法」はあまり重視されておらず、理論と戦略が十分繋がっていない人が非常に多く見られます。しかも、自分の得意技は使えても、複数の理論を選択できる人は非常に少ない(だから指導がうまくできない)。ここはもっと深めた方が良いと思っています。知識と実践の統合を目指してください。

複数の理論を使い分けできなくても価値提供するには、受講生に対し「自分は***を専門にしている」と流派をはっきりし、受講生に選んでもらうのであればそれも一つの方法です。例えば、自分は「認知行動が専門」と告知している指導者であれば、クライアント中心療法を勉強している受講生が「認知行動だったら同じ問題をどう考えるのだろう」というのが学習になります。

拡げるのか、深めるのか、どちらかはやらないとあまり指導としての効果は(受講生の度量が大きくない限りは)期待できません。

次に重要なのは「キャリアコンサルティング能力」。常に凄いプレイヤーである必要はありませんが、受講生がどうすればいいか手掛かりがなくて困っているときに、何か1つでも解決に向けたモデルを示してほしいものです。そしてもう一つ。例えばオリンピック選手のコーチが選手よりもプレイがうまい必要がないように、指導者だから受講生よりもプレイがうまいというのは必要条件ではありません。しかし、例え体は動かなくても、指導者は理想のイメージが見えていて、今の受講生のやっていることと理想のギャップが見れるというのは良い指導をする為には必要でしょう。その意味では、体は動かなくても知的には分かっている必要があります。

体が動いて自分で出来るだけでも物足りません。受講生に理解させる為には、自分がやっている思考や行為を分析的に把握した上で、論理的に相手に伝えることができないと受講生は再現できません。「ボールが止まって見えるから、それを打てばいい」というような説明では役に立つ指導になりません。論理性が高ければ分かっていることを伝えるのがうまくいくだけでなく、受講生がやっていることを論理的にチェックをしてあげることができます。

「コーディネート能力」はある意味「キャリアコンサルティング能力」の一部です。問題解決するためには自分だけが頑張っても限界があって、よりよい解決をしようと思うと周りを巻き込む力が必要、ということ。これはマネジメントやリーダーシップを勉強・体験した方は十分理解していることだと思います。キャリアコンサルティング場面でも同じということです。

 

③学習の方法

まずは実技について。

理想的には「指導者」よりも体系的な(かつ責任も難度も高い)スーパービジョンについて、スーパーバイザー養成コース等で学んだほうがよいのですが、例えば「スーパーバイザー養成コース」はキャリアカウンセリング協会では20日間73.5万円(GCDF資格者63万円)と時間も費用も負担が大きいので誰でもが受けれるわけではありません(その上受講前に面接があり、その面接に通らないと受講もできない)。

http://www.career-npo.org/service/supervisor.html

現実的には何が求められているかの概略を理解した上で、自分のできている部分、不足している部分をはっきりさせ、不足している部分を選んで一歩ずつ高めていく方法が次善の策ではないでしょうか?

 

この手のものも今後はいろいろ出てくると思いますので、指導者に向けた自分の課題が曖昧な方にはこういう問題発見の研修をまずはお薦めします。

自分の課題をはっきりさせる為に、自分の指導シーンを指導レベルが分かっている先生にチェックしてもらい、継続的に指導してもらう方法もありますが、こういう個別の指導はできる先生も少ないしコスト的にも相当高くなるので集合研修でまずは「セルフチェック」をやる方が合理的だと思います。そしてある程度自分が気づいている課題をつぶしたうえで、機会があれば先生に見てもらうとよいのではないでしょうか?

「指導能力」の中でも特に相手の枠に合わせた指導が苦手な人が多いのが個人的には気になっています。要は自分のやり方、自分の枠をついつい押しつけてしまう。ゴールに至る正解は複数あるのに、自分の案に固執して相手(受講生)の案を受け入れることができない。

ほとんどの場合は戦略のバリエーションを知らないことが原因です。自分が得意な型以外を意識していない。

1プレイヤーならばそれで何も問題ないのですが、指導者になるのであれば理論と戦略のバリエーションを持っていてほしい。例えばスーパービジョンについて「理論と実践の統合」という言い方をしたりもしますが、そうだとすると理論を知ってないとできません。

学習としてはまずは自分が学んだ標準レベルのテキストを引っ張り出して、どんなシーンでこの理論使うといいか、とイメージするところからです。

自分が学んだテキストだけでなく、できれば他の理論をまとめて紹介してある本を読むことをお薦めします。そうすると同じ理論家の理論でも表現の仕方が違うので、違う角度で見ることで理論の理解が深まります。

例えば私の家の本棚にある本を参考に挙げれば

キャリア理論ならば「新版キャリアの心理学」(渡辺三枝子著)が、理論を現実の面談でどう使うか等コメントがあるので私は好きですし、カウンセリング理論であれば相当古典ですが「カウンセリングの理論」(国分康孝著)を代表に相当数出版されています。カウンセリングを精神論でなくスキル的に説明してくれる「カウンセリングテクニック入門」(大谷彰著)も良い本です。「熟練カウンセラーを目指すカウンセリング・テキスト」(イーガン著)も個人的にはワークブックも含めて気に入っています。

知的に分かったら自分のケースや他人のケースの「問題」「目標」に対し、どの理論を使ったらどんな解決方法になるか色々とイメージトレーニングをしてみてください。

 

 

別の私の講座だけがよいというつもりは全くありません。例えば産業カウンセラーのシニアコースは通常のクライアント中心療法や認知療法のような理論以外にも家族療法やゲシュタルトのようなものまで勉強することになっているそうです(受講できる)。探せば理論の学習は各団体で色々講座があると思いますので、できれば理論だけでなく現実場面でどう使うのかまで繋がる講座を選んで受けてみてください。

指導をするうえで指導を受けた経験も重要です。受けた指導が自分が指導する時のモデルになります。

モデルが良い方がうまくなる可能性高いと思うので良い指導者を探して受けるとよいのですが、現実には検定をこれからやって選別しようとしているわけですからどの人が良い指導をしてくれるかわかりません。今一歩でも、反面教師の言葉もありますから、指導を受けてどう感じたかという体験をするだけでも、指導を受けた経験がないよりはよいと思います。

 

 

自分の成長のためにはスーパービジョンのような複数回の継続的プログラムが望ましいのですが、ケースの解決の仕方をディスカッションするような1回限りのケースコンサルテーション(専門家にアドバイスをもらう)でも機会があれば参加してみてください。

指導も最初からうまくできる訳ではありません。うまくなるためには失敗を乗り越えつつ、PDCAを回すことではじめてうまくなっていきます。指導した回数ではなく、振りかえった回数が重要です。

効果を上げるには振りかえる際に正しい視点で振りかえること。「指導関係ができたか?」「受講生は自分の課題をどう思っているか理解できたか?」「指導者として受講生の課題をどう評価したか?(それぞれの要素はどの程度できていると評価したか?)」「今回の指導の目標は何か?」「その目標を達成するためにどういうプランを立てたか?」「プランはうまくできたか?」等色々な切り口があります。

自分のレベルに合わせて今回どのあたりを重点的に振りかえるのかを選んで向上していってください。

指導の指導を受けることも指導のスキルを上げるためには有効です。お互い同士のロールプレイを第3者に見てもらってコメントをもらうのも手掛かりになりますが、可能であれば指導を分かっている先生に見てもらいアドバイスをしてもらうとより良いと思います。ただ、こういう「先生に見てもらってアドバイス」などということを考えると少人数の講座でなければ目が届かないので実施の開催は難しいのが実情です。

個人的には少人数で目が届く「演習」ものを増やしたいのですが、人数少ないと溢れるときには収集つかなくて次の日程も決めれず顰蹙だし、人数少ないと会場費や旅費を吸収できなくて大変だしで、コントロールが難しくてうまく実施できません。

少人数の演習については将来研修しながら全国を旅行する、という夢へのステップとして、「生徒が6人集まったのでやってほしい」というようなリクエストをベースに全国の小さな都市でも年間数回はやっていこうと個人的に思っています。東京の方は指導できる先生も多く機会が潤沢にあると思いますので、特に勉強に行くのに時間もコストもかかる地方都市で小さく地道に開催したいと思っています。今年は金沢で「受講生集まったから」と呼んで頂き小さな勉強会を開きます。

空いている土日があまりないので沢山はできないのですが、少しずつでも各地を回ってみたいと思っています。

 

全国色々な地域に呼んでもらうのを楽しみにしています。

(ちなみに私の「指導演習」を受ける場合の料金ですが、全国どこでも同じで2日で5万円にしています。会場費や私の旅費もその料金に入っています。)

指導の実践で特に大きな要素は「評価」です。

面接のフレームが分かっているのは当然ですが

http://career.on.arena.ne.jp/jisyu.htm

その各要素がどの程度できているか、それはなぜか、を論理的に把握する力があって初めて、「評価」が主観的な感想や意見でなく客観的な評価になります。つまり「面接を観る力」が重要です。

(ちなみに私が事務局長をしていたころのキャリアカウンセリング協会ではカウンセリングの指導をする講師を育ているために延々と地道な「面接を観るセッション」という、面接を聞いて(録音と逐語)、クライアントの発言にどんな変化があったか確認し、その変化が起こったのはカウンセラーが何をしたからか、という勉強会を実施していました。私の師匠の内田雅顕先生から随分指導していただきました)

自習の方法を考えてみました。

1)このホームページにあるビデオと逐語を使用し、クライアントの発言が(前向きな)変化をしているところを探します。どの発言番号で何と言っていたのが、どの発言番号でどう変わったか、を記録していきます。

2)その中で大きな変化を考えます。自分自身の捉え方の変化か、重要な他者の捉え方の変化か、その他環境についてに捉え方の変化か等を観れるとより望ましいのですが、まずは変化の質を意識するだけでもよいと思います。

3)変化が分かったら、何故変化したのかを検討します。多くの場合はカウンセラーがやった行為が影響しています。

4)上記でクライアントの変化、カウンセラーの行為との関係が観えるようになると、カウンセラーの行為が役に立っているか、遠回りしているか、逆効果になっているかが評価できるようになります。例えば、カウンセラーがアドバイスをしたことがクライアントにどういう変化を与えているか等をクライアントの発言を中心に検討する等練習してみてください。

何回もやらないと観れるレベルは上がりませんし、自分がカウンセラーをやるわけではないのであまり面白くないかもしれません。しかしここは地道で時間もかかりますが、指導の(実際にはカウンセリングの)肝でもあります。

自習だと答え合わせができないので、数人のグループでやってお互いにディスカッションする等でやると客観性が増すと思います。

評価について思い出すと、自分の評価能力向上(面接を観る力向上)に繋がったのは、カウンセリングの面接試験の採点です。(他の団体は録音しませんが)GCDFは録音をして採点するのですが、採点のルールで10分の面接を全て逐語のように書いて、評価について根拠を把握した上で点数をつけるのです。数百人単位で面接を聞くと(書くと)クライアントの発言に対してどう答えるとクライアントがどう感じどういう反応をするか分かるようになってきます。これも修行に近い荒行でしたが(手が痛くなる)、こういう積み重ねが大事です。ロールプレーのオブザーブをする機会があれば、必死に記録を書き、できているできていないを具体的事実と根拠を添えて伝える練習をやるとよいと思います。

論理性も忘れてはいけません。論理的と言うと理屈くさいと感じるかもしれませんが、背景が異なる相手とコミュニケーションする手段が「論理性」です。

一方的に意見を言うのではなく「事実」「論拠」を分かりやすく伝えて話す、というのが基本ですが、訓練しないと結構難しいものです。ただ、論理性やロジカルシンキングについては、研修も本もたくさん出ていますので、どれでもいいので勉強してみてください。苦手だと感じている方アカデミックな本よりも入門書の方が良いと思います。

 

知的理解について

 

よい指導者になる、という視点で言うと実技も筆記と同じなのですが、「検定」を考えると「知的なものもしっかり知っておいてくださいね。個別に測りますよ」ということなのでしょう。報告書では「支援の現場に直結する実践的な」と表現されているので、実践で役に立つ知識をもっと増やしなさい、ということです。

 

しかし、知っていたほうがよいことは際限なくたくさんあるので、全部を完璧にやろうとするのは無理があります。

 

まずは網羅的に薄く広くということでは、キャリア協議会の向上講習でも副読本で配布していますが「キャリアコンサルティング 理論と実際」(木村周著)が重要な学者の著書を網羅的に集めているので全体をカバーするための1冊としてはよいと思います。この本を読みながら、自分が関心ある部分や逆に弱い部分を深めていくのが一つの方法だと思います。

(標準レベルの団体のテキストも有効ですが、そのテキストで扱っていない範囲を上記の本で補足すると言う方法もあります)

 

その上で「こういうことも現場で知っていたほうがいい」「現場でこういう知識もいるのではないか」とイメージした内容をさらに詳しく調べていく、とのがよいと思います。

 

例えば、カウンセラーが面接で不安に思うことの代表としてメンタル問題があります。それをイメージしたのなら「DSM-Ⅳ」やメンタルの基礎の本ぐらいは追加で学習した方がいいだろう、というようなことです。

 

考え始めるともっと知っていたほうがよいことはいくらでもあります。問題毎のリファー先はどんなものがあってそれぞれ何が違うのか?労働情報の入手先はどういうものがあって何が違うのか?法律関係はどうなのか?アセスメントはどんなものがあってそれぞれの注意点は?等切りがありません。

 

イメージよりもできれば実際に現場で働いている人自身から「あなたの領域(企業、学校、需給関係)でよりよい結果を出せるキャリアコンサルタントになるにはどんな知識があったらいいか?」と聞く方がいいですね。

 

書いていて決心しました、「春秋ネットワーク」のみなさんにアンケートを送って、現場で求められる知識を集めてみたいと思います。

 

忘れていましたがスーパービジョンに関する本も紹介します。

 

すでに絶版なので図書館で借りて読む形になりますが「スーパービジョンの技法」(ニューフェルツ著)がまとまっていて良いと思います。スーパービジョンについては理念ではなく「具体的なやり方」まで分かる本が日本語ではあまりないので、書物で勉強するのは意外と苦戦します。

 

そして最後に勉強した方がよいと思っているのは「倫理」です。

 

指導者はスキル云々以前に専門家であるキャリアコンサルタントが倫理的に判断・行動取れるように指導できることが重要だと思っています(これは私個人の考えであって日本ではそこまでメジャーな考え方ではありません)。専門職としてのあるべき姿は何なのか?何を行った方がよくて、何はやってはいけないのか、これをまとめたものが倫理です(倫理には理想追求型倫理と禁止型倫理の2種類が含まれています)。つまり指導のゴール。これを知らない人間が教えるのでは表面的なものになってしまうと思うのです。条文を覚えるというのではなく、なぜそれが大事なのか、そのリスクは何かというような「倫理の意味」を指導者には理解していてほしいと願っています。

 

因みにアメリカでは倫理的な問題に迷って時にはスーパーバイザーに相談する、というのが大原則になっていますし、相談を受ければ指導をしたスーパーバイザーは訴訟上の責任も受け取ることになります。ものすごく重要かつリスクが高い機能なのですが、日本の指導者にはそこまでの機能や責任を負わせるという議論にはなっていません(なので検定だけを考えればそこまで重要ではない)ので過剰な要望なのかもしれません。しかし、誰かが倫理的な考えを定着させなければ専門職として社会から信頼されないと思いますし、その役目に一番近いのは「指導者」です。

 

参考書としては

 

少し領域は違いますが基本的な理念を学ぶ上では「臨床心理学の倫理を学ぶ」(金沢吉展著)。アメリカの倫理条項を知るという面でACAの倫理が翻訳された「最新カウンセリング倫理ガイド」(水野修次郎著)等をお薦めします。

 

倫理は非常に重要で私自身問題意識(gcdfの倫理委員会のメンバーにもなっていたので倫理を決める側や倫理問題を裁く側としても理解を深めたかった)を持っているので、勉強会等をやりたいのですが、どうも倫理は人気がなくなかなか伝えることができません。私の今年(2011年)の目標に「倫理に難するビデオをホームページにアップする」というのを掲げていますので、年内に撮影して基本の部分をお伝えしたいと思っています(一方向出の講演にすると倫理はつまらないのでどう作るか迷っている)。

 

一旦今思っていることを書いてみましたが、今後もこの「指導者に向けた学習」は修正加筆していくつもりです。まだ「指導者」の姿が具体的にコンセンサスを取れていないので、どちらかというとスーパバイザーをベースにしてこの文章を書いています。

 

よりよいものに変えていく為に、みなさんからの「ここは違うのではないか」「こういう学習(書籍等)が役立つのでは」等のご意見をお待ちしています。

 

info@career..on.arena,ne,jp

 

までよろしくお願いします。